測定なしにクロスオーバーネットワーク設計の練習をするたった1つの方法

見出しで皆さんを引っ掛けました。真実としては方法はいくつかあります…

「マルチウェイスピーカーの設計って何だか難しそうだな~。だって測定とか必要でしょ?」そう思っているあなたにもまだチャンスはあります。その方法の1つ。まずはコイズミ無線シリコンハウスの通販サイトで書籍『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』を購入してください。別に店舗で買っても構いませんが、たくさん並ぶユニットに目移りして本を買わずに帰ることはないように。「なんだ、この人また宣伝をしたいのか」。そうです大事なんです。僕はこの本をたくさん売って儲けなければいけません。実は本の制作費は今あたなが持っているオーディオセットよりもずっとずっと高いのです。いや、これは本当です。大きな金額を使い込んでしまって、妻に申し訳がたたなくなる問題を一刻も早く解決しようとするのは当然の流れ。いや、妻… これは僕の妄想でした。とにかく、大事なのは本をたくさんの人に読んでもらうことです。

『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』

さて、(皆さんを引きつけるための無駄な)前話で時間を費やしてしまいましたが、本題です。書籍『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』の12ページ「本書作例データのダウンロード先」に、URLと二次元コードを記載しています。このリンク先から以下のデータがダウンロードできます。

  • 板材カット用図面
  • 測定データ(周波数特性、インピーダンス特性、T/Sパラメーター)
  • 3Dモデリング

本書で製作した5つのスピーカーの全てのデータ類は、本を購入した人がその目的を問わず自由に使うことができます。

目次

データをダウンロードする

ダウンロードできるデータはフォルダーごとに別れている

データはGoogleドライブにアップロードしてあるので、それをダウンロードします。各データは項目ごとにさらにフォルダーに別れています。全部で5つのスピーカーのデータがダウンロードできます。

測定データは拡張子.txtのデータで、テキストエディターなどで中身を見ることができる

VituixCADに取り込む

VituixCADのDrivers画面

ここでは第2章のスピーカーのデータを例として進めます。スピーカー統合設計ソフトウェアVituixCADを立ち上げて、「Driver」のタブを選択します。まずツイーターとウーハーのドライバーを作りましょう。次に、ユニットそれぞれの画面で周波数特性とインピーダンス特性のデータ(テキストファイル)をドロップしてください。

赤線がツイーター、青線がウーハー。黒線は総合特性を示す

「Crossover」のタブはネットワーク設計の画面です。ツイーターとウーハーを配置して接続します。この時点でネットワーク回路なしの状態のスピーカーの総合特性がシミュレーションされます。なんて酷い特性なんだ! でも心配はいりません。ここからが本番。ツイーターにはハイパスフィルター、ウーハーにはローパスフィルターを挿入します。2次、もしくは3次の回路が最適です。素子をどのように配置したらいいか分からない方は『自作スピーカー 測定・Xover設計法 マスターブック』をご参考に。

次に「Optimizer」画面を開いて、ターゲットスロープを設定します。ここはクロスオーバー周波数を2kHzに設定するとか3kHzにする、などを決める画面です。スロープの形状は4次のLinkwitz–Riley(LR4)にしてください。他にも形式はありますが、みんながこぞってLR4を使うのには理由があるので、まずは先人の言うことをちょっとだけ聞いてみるのも悪くないはずです。もちろん先人とは私たちのことではなく、もっと以前からオーディオに取り組んでいる人たちのことです。

さて、準備ができたら、ツイーターだけ、ウーハーだけでそれぞれターゲットスロープに合うように、配置した素子の値を動かしてみましょう。たったそれだけ。とても簡単。あなたにもできるのです。素子の値の上でマウスのスクロールをぐるぐる回すとグラフの状態が変わります。操作する前に片方のユニットをオフにしましょう。ユニットを選択してキーボードのCtrl+mを押せばミュートになります。もしあなたがうまく素子の値を設定できたら、ユニットの周波数特性はほとんどターゲットスロープに合っているでしょう。というよりは合うように何とかするのが今回の目的でした。ツイーターもウーハーもターゲットスロープに合うようになれば、合成された総合特性もフラットになるはずです。

ピンク色の線がターゲットスロープ。Optimizerで設定をしても表示されない場合はSPLの値を適当に動かしてみると表示される。ウーハーとツイーターでこのSPLの値は同じでなければならない
ツイーターのシミュレーション結果。3次のハイパスフィルターと能率合わせのL-Padを追加している

次のグラフを見て驚くなかれ。低域の減衰を除くと中高域は±3dBの幅でとてもフラット。音質の良さそうなスピーカーです!

(注:グラフの形だけでは周波数特性がフラットなのかどうか分かりづらい場合があります。注目すべきは縦軸です。このグラフでは50dBスパンですが、100dBなど大きなスパンになっていたら要注意です。そのスピーカーはもはやフラットではないかもしれません)

合成特性がフラットになっていることも確認できた

これであなたも自由にクロスオーバーネットワークの設計ができるようになりました。もちろん今回使用したデータはあくまで本の作例スピーカーのものだということもお忘れなく。本当に自分で好きに設計するには、やはり実機の測定は必要になりますが、これで事前練習には十分役立ったのではないでしょうか? 本の代金だけで無限のシミュレーションを楽しんでください!

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