クロスオーバー発展編①
―パッシブ型 vs アクティブ型―

クロスオーバーネットワーク回路の設計において『自作スピーカー マスターブック』シリーズではパッシブ型(エンクロージャー内部にコイル、コンデンサー、抵抗が実装される)タイプを取り扱ってきました。この方式はスピーカーの基本形式であり、最も多く実装されているクロスオーバーネットワークといえます。

対してアクティブ型は、アンプの中(多くはプリアンプとパワーアンプの間)にクロスオーバー用の回路が実装されます。アクティブクロスオーバーは事前にツイーター用、ウーハー用と帯域を分割してしまうので、それぞれの信号を増幅させるためのパワーアンプはユニットの数だけ必要になります(2Wayの場合は全部で4チャンネル分アンプが必要)。

目次

クロスオーバーネットワークフィルターの種類

パッシブ型

長所:

  • 多くの作例があり実績も十分
  • 回路に使用する製品が豊富で高グレード品へ取り換えて音質の変化も楽しめる
  • 美しいネットワークパーツを配置する楽しさ

短所:

  • 複雑なフィルターは現実問題として実装が困難(ハイパス・ローパスのみが基本。ノッチフィルターを搭載するとかなり本格的)
  • 実装にはハンダ付けなど、多少の技術が要求される
  • 小型スピーカーの場合は狭いエンクロージャー内部に実装が大変な場合がある

アクティブ型

長所

  • フィルターの効きが良い(ユニットのインピーダンスの変動を受けないので純粋なフィルターとして設計できる)
  • ASP(Analog Signal Processor)の場合はオペアンプを中心とする回路で構成されるため、電力を扱うパッシブ回路に比べて素子が小さくてすむ
  • ウーハーがアンプと直結されることで電磁制動能力の低下がなくなる(パッシブ型はネットワーク回路としてコイルが入るため抵抗成分が影響を及ぼす=ダンピングファクターが低下する)
  • DSP(Digital Signal Processor)を使用する場合はフィルターをアプリケーション画面で設定でき、複雑なフィルターを組むことが容易

短所

  • アンプがユニットの数だけ必要になる(プリメインを使いたい場合は採用が困難。DSPを使う場合は好みのDACが使えない可能性が高いなど、すでにあるシステムを変更もしくは制約を受ける可能性が高い)
  • クロスオーバーの設計が難しい(とされてきた?)
  • 細かな調整はパッシブ型と比較すると劣る(とされてきた?)

アクティブクロスオーバーを設計をするには?

『自作スピーカー マスターブック』で紹介してきた手法は、測定ソフトウェアARTAを使って擬似無響室測定とニアフィールド測定によりスピーカーの音圧周波数特性を、LIMPではインピーダンス特性を取得。それらをシミュレーションソフトであるVituixCADに取り込むことで画面を見ながらクロスオーバーネットワークの設計ができる、というものでした。もちろんこれらはコイル、コンデンサー、抵抗を実際に組む話です。

では、アクティブ型では、同じような手法で設計ができるのでしょうか? 上に挙げた短所のうち、最後の2つには疑義があります。さて、その答えですが、次回に続けたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です