スピーカーユニットのボルトによる固定方法について

今回はスピーカーユニットをどのように固定するか? についてお話してみようと思います。タッピングビス? いいえボルトで固定です。

ボルトで固定が基本

フルレンジ、ツイーター、ウーハーなど、自作スピーカーに用いるユニットは必ずボルトもしくは木ネジなどでバッフルに固定する必要があります。メーカー製スピーカーでも多く用いられている木ネジの場合は、バッフルにあけられた小さめの穴にねじ込んでユニットを固定します。メーカー製では基本的にユニットの取り外しをすることを想定していないので、木ネジ方式でも問題ありません。しかし、自作スピーカーの場合は、ネットワークを交換したり、吸音材を入れ替えたりと、頻繁にユニットの取り外しを行うので、木ネジ方式ではバッフル側のネジ穴が緩んできてしまう恐れがあります。そのため、ボルトとナットを使って固定する方法が推奨されます。

ボルトの種類

ボルトにはおおまかに以下のような種類があります。

  • ナベ頭小ねじ
  • 皿頭小ねじ
  • 六角ボルト
  • 六角穴付きボルト
左から順に、ナベ頭小ねじ、皿頭小ねじ、六角ボルト、六角穴付きボルト

ナベ頭小ねじはごく一般的なボルトで、プラスドライバーで回すことができます。プラスドライバーは家庭にもあることが多く、自作スピーカー製作でも使いやすいのですが、ドライバーでの締め付けはトルクをあまり高くできず、ウーハーや大型のユニットの固定には不向きです。フルレンジや小型ユニットの固定には使えるでしょう。

皿頭小ねじは頭にテーパーがかかっているのが特徴です。同じくプラスドライバーで使います(六角レンチを使うタイプもあり)。事前にユニットボルト穴側にテーパーが設けられている部分に使い、ボルトの頭が飛び出ず、美しいデザインを保つメリットがあります。書籍『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』の第5章の作例では、Dayton Audio製のユニットを使っていますが、ツイーターとミッドレンジは皿ネジ指定のユニットでした。皿ネジは最終的にテーパー部分にフィットするため遊びが少なく、誤差をほとんど許容しないので、バッフル側の加工精度が正確であることが要求されます。このようなユニットを選定した場合には、より加工条件が厳しくなるので注意を要することがあります。

Dayton Audioのツイーターとミッドレンジ。このタイプは皿ねじを使うことになる

六角ボルトもホームセンターなどでよく目にするボルトです。これは締め付け用工具としてレンチ(スパナ)が必要になります。頭が大きく目立つので、自作スピーカーにおいてはほとんど使わないボルトと考えてよいでしょう。

次が六角穴付きボルトで、いわゆるキャップボルトです。専用の六角レンチを工具として使用します。スピーカーでは最も多く用いられるボルトです。六角レンチを使うので締め付けトルクが高く、大型のウーハーでもしっかりと取り付けできます。

六角レンチ。先端にボールポイントと呼ばれる球状の構造を持つレンチは、斜めの角度からもボルトを回すことができ便利

さまざまなボルト

ほかにもいくつか紹介しましょう。低頭六角穴付きボルト六角穴付きボタンボルトは、ツイーターで使用するとボルトの頭が飛び出ないメリットがあります。使っているツイーターによって異なるので事前に確認してください。

左から、低頭六角穴付きボルト、六角穴付きボタンボルト、フランジボタンキャップボルト
Wavecor TW030WA09に六角穴付きボタンボルトを使っている例。ボルトの頭はほとんど飛び出ない。手前のウーハーは普通の六角穴付きボルトを使用

ボルトの素材は?

基本となるのは鉄系の材質です。例えばSCM435という鉄系の合金で、表面に黒色酸化皮膜がかかっているもの。塗装ではなく黒いボルトといえばこれです。他には同じ鉄系の合金で、ステンレスも一般的です。SUS300系などのオーステナイト系ステンレス鋼は非磁性体で磁石に吸着しませんが、SUS400系などのフェライト系およびマルテンサイト系ステンレス鋼は強磁性体です。ボルトの多くはオーステナイト系のようですので、磁石には吸着しません。ネットワーク回路の組立時に磁性を嫌う場所にはステンレス系が適しています。スピーカーユニットの固定ではどうでしょうか? 他には真鍮、アルミニウム合金、チタン、樹脂などのボルトが市販されていますので、いろいろと試してみるのもよいでしょう。間違っても大型ウーハーの固定にアルミニウムや樹脂などの弱い材質は使わないようにしてください。

ナット側は鬼目ナットを使う

バッフルを挟んで反対側にはナットが必要になります。マスターブックチームとしての結論を先に言うと、最良の結果を得るためには、鬼目ナット(Bタイプ)を用いることです

鬼目ナットの種類

左からAタイプ、Bタイプ、Eタイプ

一般に“鬼目ナット”と呼ばれているインサートナットには種類があります。ちなみに“鬼目ナット”の名称はムラコシ精工の登録商標とのこと。例として以下の3つを取り上げます。

  • 鬼目ナット Aタイプ
  • 鬼目ナット Bタイプ
  • 鬼目ナット Eタイプ

鬼目ナットAタイプはホームセンターなどでも見かけます。ムラコシ精工のホームページによれば、バッフル側の表側から挿入して使うようです。表面のクサビの形状から、挿入とは逆向きには動きにくくなっているのかもしれません。僕は8cmフルレンジを使った時に、バッフルの裏面から挿入して使ったことがありますが、特に問題はありませんでした。デメリットは固定力に心配があることです。

本命の鬼目ナットBタイプは、先ほどのAタイプにツバを付けた形状です。当然バッフルの裏側から挿入します。強めの締め付けトルクをかけてもバッフル内にめり込むことがないので安心して使えます。

最後に鬼目ナットEタイプ。あまり見かけませんが紹介しておきます。全体がスクリューのような形状をしており、六角レンチを使って締め込みながら挿入します。バッフルのように貫通穴の場合は、表面、背面のどちらからでも挿入できるでしょう。ここでわざと紹介しているのは、Eタイプを使わなくてはいけない状況があるからです。一つは貫通穴を使えない場合です。バッフル板を何枚も重ねて分厚く設計している場合は、バッフル表面からEタイプを埋め込むことがあります。あるいは、Bタイプではツバの部分がユニット取り付け時に接触するなど、クリアランスの問題が生じる場合などもEタイプが視野に入ります。書籍『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』の第5章の作例では、ウーハーの一部(2ケ所)のボルトが鬼目ナットEタイプで受けるように設計しました。ボルトが側板とぶつかり、鬼目ナットが背面から挿入できないためです。もちろんこのような状況下では、最初に紹介したAタイプでも良いのですが、おそらくEタイプの方が固定力があると思います。



事前に下穴をあける

事前にあける下穴径は何ミリが最適なのか指定されているので、上記メーカーのページを参照してください。実はコンマ何ミリという細かな指定がされていますが、そのように正確な寸法で穴をあけるのは困難な場合がほとんどです。加工業者にカットを依頼している場合、ミリ単位でしか受け付けてくれないでしょう。例えばBタイプでM4ボルトを使う場合は5.6~6mmの指定になっていますが、経験上、6mmの穴で問題ありません。M3の場合は4.1~4.5mm指定で、4mm穴では初めは挿入しにくいのですが、下記の方法を使って慎重に作業すれば問題ありません。

ねじ込み方式で挿入 ハンマーは使わない

鬼目ナット(Aタイプ/Bタイプ)の挿入はハンマーで叩き込むイメージがありますが、ここではねじ込む方法を紹介します。この方法のメリットは、静かに作業できることと、エンクロージャー接着後でも挿入ができることです。

六角レンチを使ってねじ込んでいるところ

方法は写真のとおりです。「六角穴付きボルト」と「大きめのワッシャー」を準備してください。ボルトは最終的にユニットを取り付ける場合と同様のボルトであれば何でも構いません。ワッシャーは通常のワッシャーではなく、特寸と呼ばれる大口径のものを使います(さらに通常の大きさのワッシャーを間に挟んでもいいかもしれません)。この状態でセットアップし、ゆっくりと締め上げていくだけです。コツはボルトと鬼目ナットにKURE 5-56などのオイルを吹くことです。挿入には高めのトルクが必要なので、そのままではきしむことがありますが、オイルでボルトの回転をスムーズにすることができます。この方法のデメリットは、力がかかったバッフル表側にワッシャーの形が薄く付く場合があることです。エンクロージャーの仕上げを無塗装やオイルフィニッシュなどで想定している場合は裏側からのハンマー打ちを検討した方がいいかもしれません。どの程度影響があるかは事前に使用する木材でテストしてください。また、注意点として、挿入に使用したボルトは、へたってしまうので実際のユニット取り付け時には使わないようにしてください。『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』掲載の5作例全てで、この方法を使って製作しています。

爪付きナットは使わない

爪付きナット

爪付きナットは以前より自作スピーカー関連の書籍や雑誌記事などで紹介されてきましたが、非推奨です。まずハンマーによる打ち込み作業が必須であることが作業環境上ネックとなります。鬼目ナットに比較して取り付け誤差が大きくなる可能性が高いこともデメリットとしてあげられます。

挿入時の取り付け誤差はとても重要

取り付け誤差の問題については、使用するユニットによるのですが、例えば固定用にM5のボルトを想定して設計されているユニットで、ユニットにあけられている穴の直径が5.1mmなど、わずかしか違わない製品もあります。このような場合は、木工加工の誤差とインサートナットの挿入誤差により受け側のナットの位置が設計値からわずかでもずれてしまうと、ボルトは正常に噛み合わず、最悪バッフルにあけた穴の位置を修正する必要が出てしまいます。木工の加工精度の高さやナットの挿入時のずれの少なさは、エンクロージャー製作において常に気を配る重要な要因です。

細いボルトにするテクニック

ユニットの構造上、誤差の許容範囲が狭い場合は、通常よりもひとつ細いボルトを使うなど、ユーザー側の工夫で逃げることもできます。

『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』第3章作例のツイーター、SB26STAC-C000-4では、ボルト位置のPCDが88.5mmと端数だったため、実際のバッフル製作ではPCD88mmとし、通常M4のボルトを使うところM3を使うことでクリアランスを確保して取り付けを容易にした

バッフル穴あけ加工の精度が期待できない場合などは、本テクニックはとても有効です。スムーズにボルトが入らず無理やりねじ込んでいるケースは、自作スピーカーの中でもたまに見かける光景です。ボルトに傷が入ったり、ユニットのフレームに過度な力が掛かったままになるので、好ましくないのは言うまでもありません。必要に応じて検討しましょう。

Bタイプのメリット

ここまでお話したとおり、インサートナットには高い固定力と挿入時の誤差が少ないことが求められます。Bタイプのメリットは、つばが付いていることで最終的に下穴に対して垂直の姿勢を保ちやすいことです。Eタイプはねじ込んでいく際にわずかに斜めに挿入されることがよくあります(Eタイプ自体がテーパー形状であることにも起因)。これはねじ込んだ時にはほとんど分かりませんが、実際にユニットを取り付ける際にボルトの入り方のスムーズさで誤差の違いが分かります。また、インサートナットはバッフル表面よりも背面に装着されている方が取り付け誤差に対して寛容になります。これは“ボルトの頭から遠いところにナットがある方が誤魔化しがきく”という意味です。バッフル表面にEタイプを使うぐらいなら、背面にBタイプを使ったほうがうまくいくでしょう。

木ネジしか使えないケース

ボルトと鬼目ナットの組み合わせが使えないケースもあります。例えば、書籍『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』の第2章の作例で使用したツイーターPeerless XT25SC90-04は直径47mmのユニット取り付け穴に対して、ボルト取り付けのピッチ円直径(PCD)は53mmです。ボルト穴の中心からのクリアランスは3mmしかなく、鬼目ナット用の下穴をあける余裕はありません。ここではM3のタッピングネジ(トラス)を使ってツイーターを装着しています。つまりMDFのバッフルに木ネジ方式で固定しているわけです。

こういったケースでは木工加工の精度の限界に挑戦するようなことはせず、臨機応変に木ネジ方式へ切り替えるのが望ましいです。ユニットの取り外しに関しては、実際に外すのはウーハーがほとんどなので、あまり心配は必要ないでしょう。

Peerless XT25SC90-04を取り付けるためにバッフルにあけられた3カ所のネジ穴

ボルト・ナットの購入は?

ここで紹介したボルトや鬼目ナットはホームセンターで全部を入手できないことが多いでしょう。マスターブックチームの実績では、「通販モノタロウ」でその多くが購入できました。参考にしてみてください。

通販モノタロウ
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