第1章作例紹介「フルレンジの魅力」

『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』
A4オールカラー160ページ
価格 3,300円(税込)

自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』では、第1章でフルレンジの作例を紹介しています。ちょうど本の表紙のデザインにもなっているこの作例は、本の中では最も簡単に製作できる作例で、自作スピーカーにこれからチャレンジしてみたい人にもオススメな内容です。

ここではその内容を少し紹介してみましょう。

目次

ユニット

使っているユニットは、Tang BandのW4-1337SDというチタニウム製振動板を採用した10cmフルレンジユニットです。紙の振動板とは異なった音質を得ることを期待しました。ネオジム磁石を使った強めの磁気回路を搭載していて、同じぐらいの口径のユニットの中では低域の制動が強いタイプです。中心部分にはアルミニウム製のフェイズプラグを装備していて、見た目の良さも特徴の一つです。

今回このユニットを採用している理由の一つは、ユニットの低域特性を数値化したT/Sパラメーターで低域の制動性を示すQtsが、バスレフ型の設計に適している0.5を下回るスペックだったからです。小口径ユニットはQtsが高いものが多いのですが、今回は理論的なエンクロージャーの設計を紹介するために、あえて厳しい条件を設けました。もちろん総合的な音質を考えれば、よりQtsが高いユニットであっても、大きな問題は生じないでしょう。

エンクロージャー

今回実際に製作したエンクロージャーはMDF製の板材を使用し、容積は3.2リットルと小型になっています。ユニットの幅ピッタリの省スペースデザインで、デスクトップに置いて使うことを想定しました。

板材は全部で14枚あります。ユニットをバッフルに装着した際に、ユニットのフレーム部分が出っ張らないよう、薄い板材を上から重ねた設計になっています。バスレフはフロントポートを採用し、T/Sパラメーターから理論的にフラットに低域を拡張できるエンクロージャー容積(Vb)とポート共鳴周波数(fb)を設定しています。値の算出にはスピーカー設計統合ソフトVituixCADを使っており、「エンクロージャー設計」の節で詳しく書いています。

実際の製作では、私たちは1日でペアを作ってしまいましたが、これから始める方は一枚ずつ丁寧に接着してください。週末に少しずつ作業を進めても全く問題ないでしょう。

エンクロージャーの板材

スピーカーターミナル、バスレフポート、吸音材

スピーカーターミナルやバスレフポート、吸音材は全て国内のショップで入手できる市販品を使っています。詳細は本をご覧ください。P27にこの作例スピーカーに使用した全ての部品一覧を掲載しています。

気になる音質は?

さて、この作例スピーカーの音質が気になった方。本書では「全方位レビュー」の節で、作例設計者以外の著者も含めた全員の試聴レビュー(文章)と、4項目の5段階評価(表)を掲載しています。今回非常に正確な測定を行ったので、スピーカーの周波数特性やインピーダンス特性のグラフを大きく掲載しています。周波数特性を見ていただくとよく分かると思いますが、金属の振動板を使ったユニットの音がどのようなものなのか、想像もつきやすくなるのではないでしょうか? 僕のレビューは厳しいとの意見や、より好意的な意見もありました。あとは皆さんが実際に作って聴いてみてください。

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