クロスオーバー発展編③
―miniDSPでアクティブクロスオーバー回路を実装する―

安価で高性能なDSP製品を出しているminiDSP社。miniDSP 2×4(写真)はシリーズ中最も安価なモデル。左側がプレーヤーからの入力で右側が全4チャンネルの出力。ただし入力はアナログのみの仕様となっている。デジタル入力が可能なminiDSP 2×4 HDが2Wayのデバイディングには最適。3Way用に分割するにはminiDSP 4×10 Hdが必要。なお出力は全てアナログになっておりDSP内にDAC機能が内蔵されていることになる。

前回の投稿ではVituixCADでアクティブクロスオーバー回路の設計シミュレーションを行いました。シリーズ最終回は、算出された各フィルターの値をDSPに設定していきます。今回は一例としてminiDSPのminiDSP 2×4 HDという製品を用います。

目次

miniDSP 2×4 HDのアプリケーション画面

miniDSPの製品はデバイスを購入すると、操作するためのアプリケーションが付属します。また、アプリケーションのみ別途購入することもできるので、DSPを購入する前にどのようなことができるのかテストすることもできます。今回はminiDSP 2×4 HD用のプラグインソフト、2×4 HD1を使って解説します。

最初に開く画面。一番上の「Configuration Selection」は設定ファイルのプリセットです。パターンを4つまで記憶でき、スピーカーを変えた時に簡単に設定を呼び出せるようになっています。その下に「Inputs & Routing」と「Outputs」のタブがあり、まずは現在開いている「Inputs & Routing」から見ていきましょう。「Inputs」では左右のチャンネルがあり、それぞれの音量調整、パラメトリックイコライザー(PEQ)があります(今回は省略します)。「Routing」は左右チャンネルと、合計4チャンネルの出力をそれぞれどれに割り当てるかを設定します。図のように左右チャンネルが間違いなく割り当てられているか確認します。
「Outoputs」画面です。最終的に4つのチャンネルに分割されるのですが、それぞれに対してどのようにフィルターを設定するかを決めていきます。まずは「Woofer-R」「Woofer-L」の「Xover」を開きます。
前回のシミュレーションの設置値を入力します。ローパスフィルターは、3次のButterworthでクロスオーバー周波数は1516Hzでした。画面左のハイパスフィルターは「BYPASSED」と表示されています。これはフィルターがオフになっていることを表します。ローパスフィルターのスロープはオレンジの色で表示されています。
※補足(基本的にフィルターは左右チャンネルで同一の設定を行います。設定間違いが起こらないよう「Link Enabled」というL・Rの設定をリンクさせておくと便利です)
次に「PEQ」画面でパラメトリックイコライザーを設定します。右端の「Filter type:」でPEAKを選択します。これがいわゆるパラメトリックイコライザーです。周波数1020Hz、ゲイン-6.3dB、Q1.5を設定します。この製品ではイコライザーの数は全部で10個の設定が上限になります。必要に応じてシェルビングフィルターなども混在させることができます。
今度はツイーター側の「Xover」画面です。3次のButterworthでクロスオーバー周波数は2587Hzでした。同じくローパスフィルターはオフにしておきます。
ツイーターの「PEQ」です。周波数10000Hz、ゲイン-1.8dB、Q2を設定します。
最後に忘れてはならないのが、ツイーターのアッテネーションとディレイです。各チャンネルの音圧は個別に調整ができ、数字の部分を変更します。ここではツイーターチャンネルに-6.3(dB)を入力しています。ディレイの数値はシミュレーションでは65μsでした。このソフトはms(ミリセカンド)で入力します。四捨五入して0.07としました。
上記の設定でスピーカーをドライブすることで、シミュレーションで得たこの周波数特性が得られているはずです。

今回はユニットの特性もあり、とてもシンプルな設定で結果が得られました。DSPで設定するアクティブクロスオーバーは、メタル振動板ウーハーのBreak-upをしっかり潰すことや、3次や4次の急峻なフィルターを使うことが容易な点が醍醐味となると思います。

設定時の心構え

  • 数値入力は慎重に行う
  • 値がおかしくないか時々確認する
  • 設定内容は別途ファイルに書き出して保存しておく

さて、3回の連載いかがでしたでしょうか? VituixCADのような強力なシミュレーションソフトがある現在、アクティブ型のクロスオーバーネットワークはとても簡単かつ自由自在に設計できるようになっています。本質的にやっていることはパッシブ型回路の設計と変わりません。DSPによるフィルター設計は、フィルターを重ね合わせることでとても細かく調整ができ、理想的な設計が行えるといってよいでしょう。


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