第3章作例紹介「タイトなベース音 密閉型の良さを発揮」

A4オールカラー160ページ
価格 3,300円(税込)

自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』の第3章、2Way密閉型スピーカーの作例を紹介します。この作例は密閉型の利点を生かし、最適なウーハーユニットを用いて、タイトで正確な低音を狙った設計になっています。また、位相やインピーダンス特性も考慮された、本格的なネットワーク回路を搭載します。

目次

ユニット

ユニットは、ウーハーにSB ACOUSTICSのSB17CRC35-8を採用。ロハセル・カーボンサンドイッチ構造の高剛性振動板を用いています。ツイーターにはSB26STAC-C000-4を採用。同メーカーの26mmのソフトドームツイーターです。

ウーハー SB17CRC35-8

密閉型に適したユニットを選ぶ指標としてEBPがあります。EBPはスピーカーエンクロージャー設計における経験則パラメーターで、ウーハーの最低共振周波数(fs)を電気的共振先鋭度(Qes)で割った値です。50以下であれば密閉向き、50〜100だと密閉とバスレフ両方、それ以上はバスレフ型向きになるといわれています。今回は密閉型に適するユニットとしてEBPが低めのユニットを選択しました。スペックシートの値から算出されるこのウーハーのEBPは75です。50以下が最適ではありますが、大型ユニットになる傾向もあり、2Wayスピーカーでは本ユニットは最適な選択でしょう。

ツイーター SB26STAC-C000-4

SB26STAC-C000-4は口径が26mmの標準的なツイーターユニットです。周波数特性も比較的フラットで、使いやすいユニットです。

密閉型エンクロージャー

エンクロージャーのサイズは全高442mm, 幅222mm, 奥行き389mm、板材は21mm厚を使用し、ブックシェルフ型としては大型です。今回はVituixCADのエンクロージャー設計機能を用い、測定したT/Sパラメーターからエンクロージャーの容積を算出しています(VituixCADの使い方についてはこちらの記事を参照してください)。エンクロージャー内部には補強板を1枚設けることで、エンクロージャーの強度を向上させ、共振による悪影響の低減を狙っています。また、この補強材はネットワーク回路を設置する台座を併用する設計になっています。

ネットワーク

ネットワークは4次のLinkwitz–Riley型(LR4)をターゲットスロープとした、3次の電気回路で構成されています。ARTAの擬似無響室測定の結果を元に、VituixCADでネットワーク回路のシミュレーションを行いながら設計することで、60Hz~25kHz(±3dB)と広帯域でフラットな軸上特性に仕上げました。

ツイーター用ハイパスフィルター。使っている素子の種類・定数は本をご覧ください

吸音材、スピーカーターミナル

吸音材、スピーカーターミナルは全て国内のショップで入手できる市販品を使っています。スピーカーターミナルはシンプル構造を目的に、シングル接続タイプを選んでいます。吸音材に関しては最適設計のため、使用する製品とその分量を指定しています。まさに密閉型スピーカー設計の肝になる部分です。また、他の種類の吸音材を入れた場合のT/Sパラメーターの変化もテストし、データを掲載しています。詳細は本をご覧ください。また、本のP82-83には、この作例スピーカーに使用した全ての部品一覧を掲載しています。

気になる音質は?

この作例スピーカーの音質については、本の中の「全方位レビュー」で著者5人がそれぞれ批評しています。密閉型スピーカーの作例は数が少なく、本書作例は貴重です。一般的なバスレフ型との音質の違いは歴然としていました。メーカー製ではバスレフ型が多い中、バスレフ型のデメリットを克服する良さがあります。自作スピーカーにはもってこいの作例でしょう。ぜひ本作例にチャレンジし、質の高い低音再生能力を体験してみてください。



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