低価格でPreference rating 推定スコア6.0以上を目指す自作スピーカーを設計/製作するプロジェクト、その6です。 前回はニアフィールド測定が終わりましたので、今度はファーフィールド測定を行います。スピーカーの測定については、「自作スピーカー 測定・Xover設計法 マスターブック」で詳しく解説しています。気になる方は是非チェックしてみてください。 測定が難しい、困難な方には、測定無しでも理論に沿ったスピーカーが自作できる「自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック」 がおすすめです。
目次
軸外特性の測定
Preference ratingは軸上(スピーカー正面)の周波数特性に加えて軸外の評価も含めたスコアですので、ファーフィールド測定時には何十回もの測定を実行しなくてはなりません。特にPreference ratingで用いるSpinoramaの各特性を算出するには、最大で70回もの測定が必要になります。さらに、ネットワークを組む際には各ユニットごとに特性を測定するので、2Wayでは140回、3Wayでは210回となり、人力で回転させながら測定すると確実に腰が破壊されます。そこで、自動で回転する台に載せて測定することにしました。
スピーカーの自動回転測定
スピーカーの測定装置で思い浮かぶのは、なんといってもKlippel社のNEAR FIELD SCANNER SYSTEMです。著名な国内外メーカーでも使用されている、業界のスタンダードといっても良いような測定装置です。これを使うことができればよいのですが、噂によると1000万円以上するとのことで購入はあきらめました。
電動ターンテーブル付き自作スピーカースタンド
私はDIYerとしてなるべく安く済ませるべく、Aliexpressで買える怪しい電動ターンテーブルと、ホームセンターの2×4材とMDFで自作したスタンドで測定しています。
スタンド底面にはキャスターがついており、フローリング上でしたら0 °~180 °まで連続して測定可能です。製作にかかった費用は合計7000円ほどと、超格安です。このターンテーブルは7.5 °刻みでしか回転できませんので、測定データも7.5 °刻みになります。VituixCADでは上手く補完してくれる様子なので、このまま測定することにしました。
測定結果
それでは皆さんお待ちかねの測定結果です。
ND25FW-4
まずは軸上特性から見ていきましょう。かなりデータシートと異なる様子です。2 kHz~5 kHzのディップはバッフルのエッジ反射の影響と思われますが、10 kHzのディップはウェーブガイドのスロートの影響でしょうか。ここまでデータシートを裏切られると少々辛いものがありますね。
軸外はスムーズに減衰していることが分かりました。どうやら周波数特性が乱れているのは軸上のみの様子です。とにかく軸外は素直な特性ですので、クロスオーバーの設計の自由度は高そうです。
RS125-8
ニアフィールド測定結果とファーフィールド測定結果を合成した特性になります。非常に優秀で、バッフルのエッジ反射の影響も致命的ではなさそうです。200 Hz~2 kHzにかけてのバッフルステップを補正すれば、かなり平坦な特性が得られそうですね。
3 kHzまでは指向性に大きな問題は無さそうです。3.5 kHzあたりに軸外のディップが存在するので、この辺りがクロスオーバー上限となるでしょうか。なにはともあれ絶望的な特性ではなかったので、EPR6.0は何とか目指せそうです。
次回予告
次回はいよいよネットワークの設計を行います。お楽しみに!
補足
今回はweb連載という事で、かなり省略しています。より実用的な自作スピーカー設計の手法や作例については、好評発売中のマスターブックシリーズ各書にて詳しく解説しておりますので、ご参考いただければ幸いです。
『自作スピーカー マスターブック』著者。性能を重視したスピーカーとアンプの自作を行っている。