2Wayスピーカープロジェクト Śiva Project BS2-WG その8

 低価格でPreference rating 推定スコア6.0以上を目指す自作スピーカーを設計/製作するプロジェクト、その8です。前回はネットワークの検討が終わりましたので、今回からは実際にネットワークを設計していきます。

 パッシブネットワーク設計についてはマスターブック各書で紹介しています。また、「自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック」 デザインレシピ集では作りやすさを考慮したネットワーク回路と製作例を掲載していますので、是非チェックしてみてください。

目次

ウーファーのネットワーク設計

 前回クロスオーバー周波数を3.5kHz付近と決めましたので、それに沿ったネットワークを設計していきましょう。ネットワーク設計の手法は色々ありますが、VituixCADには強力なオプティマイザがありますので、そちらを使って設計していきます。

軸上ターゲット音圧

 まずは素の特性からターゲット音圧を見積もっていきます。基本的にはバッフルステップの影響が出る手前(100 Hz~200 Hz)の音圧がもっとも低くなっているはずなので、その音圧をターゲットとしましょう。ちなみに今回はエンクロージャーシミュレーションの値から出力音圧を推定していますので、絶対音圧としては推定値になります。

ローパスフィルタ設計

 次にターゲットカーブを4次のLR4に設定し、ネットワークには4次のローパスフィルタを適当に配置します。そのあとオプティマイザをかけると、以下のような特性になりました。

 この時点でかなり綺麗な特性にはなっていますが、コイルとコンデンサの抵抗値が考慮されていません。今回はコストダウンのためネットワークコイルには20AWG程度の空芯コイル、コンデンサは無極性電解コンデンサを使用しますので、そちらを考慮した上で再度オプティマイザをかけてみます。

 多少ブレークアップの影響が出ましたが、コイルの抵抗値のおかげで100 Hz~200 Hzの盛り上がりが軽減されたように見えます。また、最終段のコンデンサが100 pFに落ち着きましたので、最終的には3次のネットワークとなりました。とりあえずツイーターのネットワーク設計に移りましょう。

ツイーターのネットワーク設計

 ツイーターも同様にターゲットカーブを4次のLR4に設定し、WFと同じ3次のネットワーク+アッテネータをオプティマイザで最適化しました。

ハイパスフィルタ設計

  NBD_ONは12 kHzまでしかスコアに入らないため15 kHz付近のピークは問題ないのですが、PIRには影響するためディッピングフィルタを通してみました。

 まだ多少のピークディップはありますが、これ以上調整すると今度はListening windowが乱れてきますのでひとまずはこれで完了としておきましょう。

合成特性

 現状での合成特性を見てみましょう。

 わりとまともそうな特性になりました。あとは微調整すれば何とかなりそうです。

また、最近のアップデートでVituixCAD上でPreference ratingが表示できるようになりましたので、見てみましょう。現状では5.96と6.0に届いていません。

最終特性

  最終調整として、Preference ratingでのオプティマイザを実行しました。

 NBDはON/PIRともに0.24、SM_PIRは0.94となり、EPRは6.35になりました。これでEPR6.0以上という特性は満たせそうです。フラッシュマウント無し、バッフルエッジ加工無しのエンクロージャーとしては、かなり良い値ではないでしょうか。実際にはWFのネットワークの影響でLFXが増大しスコアが減少すると思われますが、6.0に対しては十分なマージンを持っていますので問題は無いでしょう。

次回予告

 今回の設計でネットワークパーツの値が決まりましたので、次回は3万円以内に収めるべくネットワークパーツの選定をしていきます。

 また、VituixCADのネットワーク設計についての質問等ございましたら、コメント欄にご投稿いただければできる範囲で回答いたします。遠慮なくご質問ください。

補足

 今回はweb連載という事で、かなり省略しています。より実用的な自作スピーカー設計の手法や作例については、好評発売中のマスターブックシリーズ各書にて詳しく解説しておりますので、ご参考いただければ幸いです。

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