今年も「これならできる特選スピーカーユニット 2021年版 オンキヨー編」が発売されました。今年はオンキヨー編という事で、2019年にオンキヨーが開発発表した「バイオミメティクス振動板」を使った10 cm フルレンジ・スピーカーユニット、OM-OF101が付録です。この記事では実測データも交え、OM-OF101の実力をチェックしていきます。
目次
外観
まずは目を引くのは何といってもバイオメティクス振動板です。トンボの翅脈のような模様がデザインされ、さらに全体的に湾曲した複雑なフォルムをしています。FOSTEXのHR振動板のような効果があるのでしょうか。
エッジはロールエッジではなく、タンジェンシャルエッジとなっています。ロールエッジと違い、エッジがコーンのプロファイルに沿った形状となり、フレームからの飛び出しが少ないので、指向性の乱れがある程度軽減されそうです。
フレームはプレスフレームです。ベントも十分に空間が空いており、奥にボイスコイルが見えますね。xmaxは公称されていませんが、3 mmほどでしょうか。
インピーダンス特性の測定
インピーダンス特性の測定に関しては、こちらをご参照ください。今回は Break-in による変化も確認するため、Break-in前後で測定してみます。最大入力が10 Wで公称インピーダンスが6 Ωですので、余裕をみて5 Vとしましょう。周波数は最低共振周波数とし、15分間負荷をかけました。
緑がBreak-in前、黄色がBreak-in後です。全体的に見て、共振によるピークもなく比較的綺麗な特性です。また、Break-in前後で最低共振周波数がわずかに変化していますね。
T/Sパラメータの測定
T/Sパラメータも測定してみました。方法はネオジム磁石を使用したAdd mass methodです。
公称値 |
Break-in前 | Break-in後 | |||
A | B | A | B | ||
fs [Hz] | 92 | 92.31 | 92.99 | 89.16 | 89.13 |
Qms | 4 | 6.34 | 6.59 | 6.05 | 6.34 |
Qes | 0.8 | 0.82 | 0.79 | 0.78 | 0.76 |
Qts | 0.67 | 0.72 | 0.71 | 0.69 | 0.68 |
Rms [Ns/m] | – | 0.402 | 0.395 | 0.408 | 0.386 |
Mms [g] | 5 | 4.42 | 4.45 | 4.48 | 4.4 |
Cms [mm/N] | – | 0.6732 | 0.6585 | 0.7118 | 0.7239 |
Vas [l] | 2.2 | 2.39 | 2.34 | 2.53 | 2.57 |
Sd [cm2] | 50.3 | 50.27 | 50.27 | 50.27 | 50.27 |
BL [Tm] | 4.3 | 4.042 | 4.133 | 4.077 | 4.101 |
インピーダンス特性と同様、Break-in前後で大きな変化は見られませんでした。Break-in後のほうが全体的に公称値と一致しているように見えます。Qmsを除けば公称値とほぼ一致する結果となりました。
エンクロージャーシミュレーション
T/Sパラメータの測定が終わったので、さっそくエンクロージャーシミュレーションを実行しましょう。毎度のごとく、VituixCADを使用します。
EBPは100を超えているので、バスレフで設計することにしました。アライメントはSC4にしてみましたが、かなり低域が出ていますね。ただ容積が12.6Lとかなり大きなエンクロージャーですので、7Lとして再設計してみます。
このスピーカーユニットはQtsが高いため、小容積で平坦な特性を出すことは難しい様子です。それでもf6(-6dBになる周波数)は50.4 Hzと、かなり低域が充実しています。
軸上周波数特性予想
スペックシートに周波数特性が記載されているので、VituixCADのトレース機能で読み取って一般的なバスレフを製作した場合の軸上周波数特性を予想してみます。(バッフルステップのシミュレーションは高さ260 mm、幅160 mmのバッフルとしています)
スペックシートの特性はフラットなのですが、やはりバッフルステップの影響が大きいですね。ここでバッフルステップ補正のネットワークを入れてみましょう。
6.8 Ωと1 mHを並列にしたバッフルステップ補正を入れると、かなり平坦になりました。
まとめ
エッジ共振や鋭いピークも少なく、オンキヨーの技術が発揮されているフルレンジ・スピーカーユニットと言えるでしょう。単体でも十分な再生周波数レンジがありますし、ウーファーやツイーターと組み合わせて2Way/3Way構成にするのも面白いかもしれません。時間があれば実際にエンクロージャーを設計し、軸外を含む特性を測定……するかもしれません。
また、今回シミュレーションに使用したインピーダンス特性と周波数特性をこちらに用意しました。
※あくまで参考程度として、良識の範囲でご使用ください。
それではみなさん、素敵な自作スピーカーライフを!!
『自作スピーカー マスターブック』著者。性能を重視したスピーカーとアンプの自作を行っている。