「7月は読書推進月間」です、と勝手に宣言しましたので、僕が読んでいるオススメ本を一挙紹介します。今回は実際に手元にある本をピックアップ。雑誌は含めず書籍だけに絞りました。
*本のタイトル部分からAmazonやBOOTHなどの販売サイトへリンクできますが、現在新品が入手できない本も中にはあります
長岡鉄男の
わけのわかるオーディオ
著 者 長岡鉄男
出版社 音楽之友社
発売日 1999年10月1日
「難しい言葉が多いオーディオをなんとかしたい。ということで『わけのわかる』とひらがなの書名を付けた」と前書きにある。オーディオ全般を扱っていて、音響、スピーカー、アンプ、アクセサリー、リスニングルーム、果ては音源までを網羅的に解説。オーディオ評論家・長岡鉄男のエッセンスが凝縮する、オーディオ解説書の金字塔。
世界でただひとつ
自分だけの
手作りスピーカーをつくる
著 者 長岡鉄男
出版社 講談社
発売日 1999年7月1日
長岡鉄男が設計したスピーカーの図面が一同に並ぶ。「ユニットって何だ?」「エンクロージャーの話」など巻頭に初心者向けの解説があり、作る楽しみを引き立てている。各作例は「コンセプト」「ユニット」「材料」「組み立て手順」が示されており、平面の板取り図のほか、3Dの完成予想図のイラストが秀逸。たくさんの作例の中から自分がチャレンジしてみたいものを見つけることができるだろう。
長岡鉄男の
オリジナルスピーカー設計術
基礎編
著 者 長岡鉄男
出版社 音楽之友社
発売日 2007年10月31日
各エンクロージャー方式の理論的な解説に始まり、意外なことにクロスオーバーネットワークの種類も細かく解説されている。「なんでもQ&A」は読者からの質問や悩みに著者が答えるコーナーで、これが面白い。真面目なものが多いが、中には「10年前の長岡氏の記事に疑問あり!」というお怒り読者の投書に答える場面も。
スピーカー&
エンクロージャー大全
著 者 佐伯多門
出版社 誠文堂新光社
発売日 2018年2月8日
長らく事実上の廃盤だった緑表紙の書籍が改訂された新版。スピーカー技術に関する情報がこれ以上まとまっている本はほかに無いと言っていいほど、ファン待望の書籍。自作スピーカーを楽しむために一度は目を通してほしいが、技術者寄りの内容であるため、すぐに設計・製作に役立つとは限らないかもしれない。また、ある時点で技術内容が歩みを止めている点は残念。
作りやすい
高音質スピーカー
著 者 小澤隆久
出版社 誠文堂新光社
発売日 2013年4月23日
著者がオーディオ雑誌『MJ無線と実験』に連載をしていたスピーカー作例の中から30機種を選び書籍として再構成したもの。さまざまな形式のスピーカー作例が、詳細な測定データと図面と共に紹介されている。使用ユニットはFOSTEX、Mark Audio、TangBand、SB Acoustics、YSC Audioなど多岐。興味のあるスピーカー形式の作例を探してみては?
高品位
スピーカーシステム
著 者 新井悠一
出版社 誠文堂新光社
発売日 2008年10月1日
上記小澤氏の本が作例本だとすると、こちらは設計解説書。エンクロージャー設計に必須となるT/Sパラメーターを解説した日本で初の書籍ではないだろうか。第4章では実際のスピーカーの製作記事があり、設計だけでなく製作面でも参考になる。
位相反転型エンクロージャの設計法
著 者 田中和成
出版社 誠文堂新光社
発売日 2008年3月1日
バスレフ型エンクロージャーの設計に特化した書籍。各種パラメーターから最適なエンクロージャー容積、ポート共鳴周波数を算出する方法を、公式を順番に解きながら解説している。現在はシミュレーションソフトが計算を担うので手計算の出番は無くなったが、背景となる理論を学びたい人に向く。最近改訂版が発売された。
※ここで紹介したのは旧版。リンク先は改訂版
自作スピーカー12選
編 集 オーディオクラフトマガジン編集部
出版社 誠文堂新光社
発売日 2007年11月1日
楽しそうな表紙に目が行く、いわゆるクラフト本。木工、工作をする楽しさが伝わる。正十二面体エンクロージャーの作例など、ユニークなものが特に目を引いた。
さかどんのオリジナルスピーカー
つくりかた&設計図面集
著 者 酒井佑弥(同人誌)
監 修 炭山アキラ
発売日 2018年10月8日
バックロードホーン、バスレフ型、トールボーイ型などのスピーカーの設計図面が掲載。必要な工具類、製作フローチャートで工程の紹介など。オーディオ評論家・炭山アキラ氏が寄稿・監修という形で参加している貴重な本。
理論からはじめる
スピーカー設計入門(上巻)
著 者 黒澤 将
出版社 Metro Audio(同人誌)
発売日 2020年3月
大学で電気工学、音響工学を勉強した人向けの本。方程式が多く難解だが、図やグラフが適切に挿入されており、同人誌としては非常に完成度が高い。ある程度理論的な知識のある人がこの本を開くと、得られるものがあるかもしれない。
※リンク先は電子版での販売
同人誌ほか
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僕は一時期オーディオ系同人誌をせっせと収集していました。ここで紹介したかったものが他にもいくつかありますが、残念ながら手元にありません。収集の目的は、これら出版物を業界人(評論家、編集者)に見せることでした。機は熟し、どのイベントだったかは忘れましたが、オーディオ評論家・林正儀さんへ大部分を寄贈しました。林さんは学生オーディオなど若手オーディオファンとの関係を構築している方で、雑誌でもたびたび若い人を取り上げておられます。
そのような関係性を作っていた頃、『stereo』編集部から「学生対抗スピーカー甲子園」の企画案が上がり、僕は少し協力することになりました。学生自作スピーカー、新時代の幕開けでした。
というわけで、商業誌、同人誌を交えて紹介しました。今は読書に励んで知識をためる時期として最適でしょう。他に皆さんが知っているオススメの本があれば、教えてください!
『自作スピーカー マスターブック』編集者。