自分の作った自作スピーカーが好みの音になるかどうかは、作り手としては一番気になるところです。「マスターブック」では正確な測定とシミュレーションによる設計を全面に押し出しましたが、その手法なら絶対に高音質が得られるか? という問いかけに、(私個人としては)完全に“そうだ” と答えられない気もしています。つまり後から微調整が必要なことは“良くあること”です。
目次
周波数特性を微調整する
本記事では、音質を左右する最も代表的な調整手法の一つとして周波数特性の微調整を紹介します。スピーカーの総合的な周波数特性は、ユニット特性、クロスオーバーネットワーク特性、エンクロージャーの構造など、さまざまな要因を受け変化しますが、最も簡単で大きな変化を生じるツイーターのレベル調整をオススメしましょう。ツイーターには通常ネットワーク回路として抵抗が挿入され、音圧を元の状態よりわざと落として使うのですが、その抵抗値を変更することで、高音域の音圧を上下に変化させることができるのです。
上の周波数特性のグラフは『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』に掲載した作例の一つの特性です。この本には各作例ごとに「オプション」のページを設けていて、ツイーターのレベル調整を行った時の3段階の周波数特性を掲載しています(フルレンジ作例は除く)。
上の図は実際のネットワーク回路を示しています。青枠で囲まれている「R2」という抵抗が鍵になります。答えを先に言うと、実はツイーターのレベル調整には、抵抗(R2)1本を交換するだけで実現できます。抵抗の値がどうなった時に周波数特性が上がる・下がるのかは、本に詳しく書いてあるので参考にしてください。
実際の作例の音質はどうだったのか?
本では「全方位レビュー」として、作例スピーカーの音質を5人の著者でそれぞれ評価しました。詳細は本に譲りますが、私が感じた部分で言えば、
- 第3章 2Wayブックシェルフ 密閉型
もっとツイーターを落とした方がバランスが良かった
- 第4章 2Wayトールボーイ バスレフ型
もっとツイーターをアップした方がバランスが良かった
などです。本書の制作の都合上、ツイーターのレベル調整の比較試聴は行っていませんが、この微調整だけでスピーカーの音質傾向はかなり変わってきたのではないかと思います。つまり、僕の書いた音質の感想も各項目5段階評価の数字も、ガラっと変わっていたかもしれません。
その他のオプション
『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』では、その他のオプションとして、以下のような内容を紹介しています。
- フルレンジスピーカーにノッチフィルターを搭載して周波数特性を整える
- バスレフ型のポートチューニングによる低域の変化
- 密閉型の吸音材の種類と量の違いによる変化
- ウーハーの高域共振を抑えるノッチフィルターの搭載
- ネットワーク回路の高次化(2次→3次)
- トールボーイ型スピーカーの脚のデザイン変更
『自作スピーカー マスターブック』編集者。