クロスオーバーネットワーク回路の設計において『自作スピーカー マスターブック』シリーズではパッシブ型(エンクロージャー内部にコイル、コンデンサー、抵抗が実装される)タイプを取り扱ってきました。この方式はスピーカーの基本形式であり、最も多く実装されているクロスオーバーネットワークといえます。
対してアクティブ型は、アンプの中(多くはプリアンプとパワーアンプの間)にクロスオーバー用の回路が実装されます。アクティブクロスオーバーは事前にツイーター用、ウーハー用と帯域を分割してしまうので、それぞれの信号を増幅させるためのパワーアンプはユニットの数だけ必要になります(2Wayの場合は全部で4チャンネル分アンプが必要)。
目次
クロスオーバーネットワークフィルターの種類
パッシブ型
長所:
- 多くの作例があり実績も十分
- 回路に使用する製品が豊富で高グレード品へ取り換えて音質の変化も楽しめる
- 美しいネットワークパーツを配置する楽しさ
短所:
- 複雑なフィルターは現実問題として実装が困難(ハイパス・ローパスのみが基本。ノッチフィルターを搭載するとかなり本格的)
- 実装にはハンダ付けなど、多少の技術が要求される
- 小型スピーカーの場合は狭いエンクロージャー内部に実装が大変な場合がある
アクティブ型
長所
- フィルターの効きが良い(ユニットのインピーダンスの変動を受けないので純粋なフィルターとして設計できる)
- ASP(Analog Signal Processor)の場合はオペアンプを中心とする回路で構成されるため、電力を扱うパッシブ回路に比べて素子が小さくてすむ
- ウーハーがアンプと直結されることで電磁制動能力の低下がなくなる(パッシブ型はネットワーク回路としてコイルが入るため抵抗成分が影響を及ぼす=ダンピングファクターが低下する)
- DSP(Digital Signal Processor)を使用する場合はフィルターをアプリケーション画面で設定でき、複雑なフィルターを組むことが容易
短所
- アンプがユニットの数だけ必要になる(プリメインを使いたい場合は採用が困難。DSPを使う場合は好みのDACが使えない可能性が高いなど、すでにあるシステムを変更もしくは制約を受ける可能性が高い)
- クロスオーバーの設計が難しい(とされてきた?)
- 細かな調整はパッシブ型と比較すると劣る(とされてきた?)
アクティブクロスオーバーを設計をするには?
『自作スピーカー マスターブック』で紹介してきた手法は、測定ソフトウェアARTAを使って擬似無響室測定とニアフィールド測定によりスピーカーの音圧周波数特性を、LIMPではインピーダンス特性を取得。それらをシミュレーションソフトであるVituixCADに取り込むことで画面を見ながらクロスオーバーネットワークの設計ができる、というものでした。もちろんこれらはコイル、コンデンサー、抵抗を実際に組む話です。
では、アクティブ型では、同じような手法で設計ができるのでしょうか? 上に挙げた短所のうち、最後の2つには疑義があります。さて、その答えですが、次回に続けたいと思います。
『自作スピーカー マスターブック』編集者。