測定は広い部屋でやれ!

マルチウェイ型のスピーカーを自作する際に重要になるのが、購入したスピーカーユニットの特性がどのようになっているか知ることです。測定には「インピーダンス特性」と「音圧周波数特性」の2つがあり、メーカーから測定データが提供されている場合もありますが、自作スピーカーでは自分で測定することが前提となります。

目次

インピーダンス特性は簡単に測定できるが…

測定に関する詳細を解説した書籍として『シミュレーションと測定による自作スピーカーのクロスオーバーネットワーク設計』があります。オーディオインターフェースやマイクのセッティングについて詳しく解説しています。測定が必要なデータのうち、インピーダンス特性については割と手軽に始められます。オーディオインターフェースにユニットを直接接続する方法では、抵抗1つ挟むだけの簡単な構成です。

シミュレーションと測定による自作スピーカーのクロスオーバーネットワーク設計
判型:A5(272ページ)/価格:3,740円(税込)

音圧周波数特性の測定が難しい

問題は周波数特性です。本を読んでいただければよく分かりますが、周波数特性の測定はエンクロージャーが完成した後に行います。低域だけを測定するNear field測定は、振動板の直近にマイクを設置するだけなのでセッティングの難しさはありません。ところが、中高域の周波数特性を取得するための疑似無響室測定Far field測定)はセッティングに厳しい条件があります。簡単にいうと、スピーカーとマイクはそれぞれ部屋の壁から十分な距離を取って設置する必要があるのです。

さて、そこまでは理解できている、という読者も多いことだと思います。ところが現実は割と違っていて、まるで狭い部屋で測定しているケース、家具などの障害物や、誤ったマイク保持の問題を持っているケースを散見します。僕が測定に立ち会ったのではありませんが、データを見ると分かるのです。インパルス応答の波形で、部屋の壁からの1次反射が入るタイミングがあります。この1次反射より早くに波形の乱れがあれば、何らかの反射音が混じってしまっていることになり、セッティングに問題があることが分かります※※。「とりあえず測定してみよう。精度は高くなくてもいいし」という考え方はアナログTVのアンテナ調整のようなもので、昭和の遺物でしょう。疑似無響室測定は反射音を完全に除去できないとその測定法を採用している意味がありません。

と、厳しいことを言いましたが、6畳の自室しかない場合、どのようにしたら良いのでしょうか? 本稿はその解決策を提案します。

※ 擬似無響室測定ではスタンド付属のマイクホルダーは使わず、延長ロッドを使うこと
※※ 本書P40-41には誤ったセッティングによる測定データの例を掲載。このように必要要件を満たさない方法は、結局目的地まで遠回りをする羽目に。正確に測定できていないデータを元にクロスオーバーネットワークを作ろうとすれば余計にハードルを上げてしまう

解決策① 広い部屋を借りる

自分の部屋を諦める、という選択。この発想がない人が実に多い! 例えば僕たちは「オーディオ勉強会」を過去に開催しています。第1回から第3回までは公民館を会場として借りたのですが、「午後+夜間」の時間帯を借りて4千円もかかっていません。「第3回オーディオ勉強会」ではマスターブックシリーズの著者である鈴木康平さんが測定の実演を行いました。備え付けの椅子や机は、必要な場合移動させて必要十分な広さを確保できます。この方法のデメリットは、会場までスピーカー・測定装置一式を運搬する労力がかかることです。費用に関しては会場によって異なりますが、一発で完全データを得られるのなら安いものでしょう。

2019年5月に開催した「第3回オーディオ勉強会」測定実演での疑似無響室測定の風景。対象はTangBandの8cmフルレンジスピーカー。40人弱が着席できる教室で行った。このように外部の部屋を借りる場合は、少なくとも事前にソフトの設定を確認して音出しとマイクの反応が正しいことを確認してから実践に挑むことをオススメする

解決策② 友達の助けを借りる

これも見落としがちなポイント。都市部に住んでいる人なら、オーディオイベントやソーシャルメディアを通じて、すぐに交流できる友達を作ることができます。残念ながら地方在住の方ではすぐに会える距離に友達を作ることが難しい場合もあるかもしれません。ただ、個々の状況はともあれ、人脈を広げることはいつも大切です。孤高のマニアでは何も出来ないのです。そして、友達の輪が広がればその中に一人ぐらい測定のできる(やったことのある)人が現れます。その彼は自宅が豪邸で思う存分測定できるので、「今度お邪魔させてよ。スピーカー持っていくからさ」とお願いをします。少なくとも作業を手伝うフリをしながら、ほとんどやってもらって正確な測定データを取得できるというわけです。この方法のデメリットは、あなたの人を見る目が、あるか・ないか、に結果が左右されるということぐらいでしょう。

※逆の立場になって考えると良くない場合もあります。現実の会話として「熊谷さんち広いですよね? 今度行きます。10°刻みで測定したいんで!」「アホか(あの超大型スピーカーやろ!)」というのがありました

スピーカーを持ち寄って測定オフ会をするのはなかなか面白い

解決策③ 発注する

お金を出してやってもらう、という選択。DIYの観点から推奨できる方法ではありませんが、木材カットだってプロにやってもらうのだから、誰かにやってもらうことも妥協できるのかもしれません。残念ながらこの業者がオススメ、というのが思い当たりません。というか、現時点では存在しないかもしれませんが、今後に期待することにしましょう。

解決策④ やっぱり断捨離

本書には「6畳のスペースがあれば測定は可能」とあります。ここは思い切って大きな家具を断舎離することです。小さくて搬出可能なものは測定時だけ移動させれば済むでしょう。この手法のうれしい特典として、部屋が広くなったことでオーディオの音質がアップするという効果もあることです。これはもう、やるしかありません。

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