目次
前回までの内容
前回はエンクロージャーを各板材に分割するところまでご紹介しました。ここからは使用するユニットのサイズに合わせ、ユニット取付穴の加工をしていきます。
ユニット寸法の読み取り
データシートから寸法を読み取る
今回はサンプルとして、TW022WA06とWF118WA02を使用します。
エンクロージャー構造の設計に最低限必要な寸法は、バッフル開口径、ネジ穴径、ネジ穴P.C.D.です。今回はフラッシュマウントとする予定ですので、さらにフランジ外径、フランジ厚が必要になります。今回はメーカースペックシートより、以下の表を作成しました。
寸法表
TW022WA06 | WF118WA02 | |
バッフル開口径 Φ [mm] | 81 | 93 |
ネジ穴径 Φ [mm] | 4.5 | 4.5 |
ネジ穴 P.C.D [mm] | 92 | 109 |
フランジ外径 Φ [mm] | 103.75 | 118 |
フランジ厚 [mm] | 3.5 | 3.4 |
今回はスペックシートから値を読み取りましたが、エンクロージャー設計の際には実物を計測することをおすすめします。いざユニット装着しようという段階で、ターミナルが邪魔で入らない、なんてことも……
コンポーネント
ボディのコンポーネント化
ここからは各板材を加工していく工程になるため、あらかじめ各ボディをコンポーネント化しておきます。ボディのままでも加工は可能ですが、フィーチャ履歴がスッキリするこの方法をおすすします。(筆者は面倒くさがりなので、ボディのままガンガン進めて後で後悔することがよくあります。)
①ボディ を右クリックし、 ②ボディからコンポーネントを作成 をクリックすると、それぞれのボディがコンポーネント化されます。それぞれ名前を付けておくと編集時に分かりやすくなります。
コンポーネントをアクティブにする
次に ④の部分 をクリックし、バッフルをアクティブにします。 バッフル以外の板材が透過され、新たに ⑤バッフルのフューチャ履歴 が作成されているのが確認できます。
ユニット取付穴の作図
スケッチの作成
今回はユニット位置をバッフル上端と下端から測りたいので、スケッチ平面をバッフル表側に設定します。
最初に中心線を引きましょう。①で線分をクリック、次に②バッフル上端の中点を選択し、次に原点をクリックすると、バッフル上下端に拘束された線分が作成できます。
次に円を作成します。まずツイーター側から作成することにします。④中心と直径で指定した円を選択し、先ほど作図した中心線上の⑤適当な位置をクリックします。(④中心と直径で指定した円が見つからない場合は、作成▼をクリックし、円の中から選びます。)
次に⑥円の直径を指定します。スペックシートでは81 mmですが、余裕を見て82 mmと入力し、Enterを押して決定します。
円の作図が終わったら、位置を指定しましょう。⑦スケッチ寸法をクリックし、⑧バッフル上端の中点と⑨円の中心点をクリックします。その後、⑩寸法の位置を選択し、⑪寸法の数値を入力します。これでバッフル上端から指定した位置に、円のスケッチを描くことができました。
穴あけ
押し出しによる穴あけ
スケッチを終了したら、次は穴あけです。
①押し出しをクリックし、②,③のプロファイルを選びます。次にアイソメビューに変更し、板材の厚みをくりぬける程度の数値を入れます。-30など十分大きな値を入力しておくと、後で板厚を変更した場合でも対応できるようになります。
WFも同様にスケッチを作成し、押し出しを行います。新たにスケッチを作成しても良いですし、先ほど作成したスケッチを編集しても構いません。
穴あけ後の修正
前回同様スケッチの編集で穴径や穴の位置の修正が容易に行えます。この状態でバッフルサイズを変更しても、ユニット取付穴の位置もバッフルサイズに追従するので、細かな修正を行うときに便利です。
Fusion360を使用したエンクロージャー構造設計法 中編はここまでになります。最終回は、ネジ穴とフラッシュマウント用の板の作成です。
『自作スピーカー マスターブック』著者。性能を重視したスピーカーとアンプの自作を行っている。