タイムアライメントなら聞いたことはあるけど、バスレフアライメントって何? と思われる方が多いのではないでしょうか。バスレフのアライメントとは、
ユニットのQtsに対して最適なαとHの組み合わせがある
という理論です。ここでαはユニットのVasとエンクロージャー容積の比、Hはバスレフチューニング周波数とユニットのフリーエア共振周波数の比です。αとHの組み合わせはQtsごとにアライメントテーブルという表にまとめられています。アライメントテーブルを使うと、バスレフ型エンクロージャーを簡単に設計することが出来ます。すなわち、ユニットのQtsが分かれば最適なαとHの値が分かり、エンクロージャー容積とチューニング周波数を決めることが出来るのです。
バスレフアライメントという考え方は決して新しいものではなく、T/Sパラメータの発明者の一人であるA. N. Thieleの1961年の論文”Loudspeakers in Vented Boxes: part 1″に登場します。その後、様々なアライメントが考案されました。VituixCADを使っている人なら、Enclosure Toolの中にSBB4 / BB4、QB3 / SQB3、SC4 / C4を選択するボタンを見たことがあるでしょう。これらはすべてアライメントの名称です。名前に”4”が付くものが多いのは、バスレフの等価回路が4次のハイパスフィルターの形をしているからです。
このように便利なアライメントテーブルですが、不思議なことにバスレフアライメントについて解説した書籍は、日本では『自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック』以外にありません。
現在ではエンクロージャー設計にはWinISDやVituixCADといったソフトウェアを使うのが普通ですが、バスレフの基礎的な振る舞いを理解する上でアライメントテーブルはとても役に立つものです。たとえば、なぜQtsが0.5を超えるユニットはバスレフに適合しないのか一目で分かります。これからバスレフ型エンクロージャーを製作しようという方は、いちどバスレフアライメントとアライメントテーブルについて勉強してみてはいかがでしょう?
『自作スピーカー マスターブック』シリーズ著者。AES(Audio Engineering Society)正会員。自作スピーカーと測定・クロスオーバーネットワーク設計に関するブログ「冬うさぎの晴耕雨読な日々」更新中。「MJ無線と実験」にスピーカー製作記事を連載中。