雑誌『stereo』主催「第3回学生対抗スピーカー甲子園」の結果は?

さる9月27日(日)に東京神楽坂の音楽之友社音楽ホールで開催された、雑誌『stereo』主催「第3回学生対抗スピーカー甲子園」の開催報告が、『stereo』11月号で第2特集として組まれています。

『stereo』2020年11月号

目次

若手の自作スピーカーファンは、すでにかなりの数になっている

2018年から始まったこの企画は、昨今の若手オーディオファンの多さと、その勢いを非常によく象徴していて、自分が自作スピーカーを始めた頃と比べれば状況が一変していることに気付かされます。大学や専門学校の中にあるオーディオ部やサークルなどに所属する人たちは、勉学に励みつつもスピーカー製作やアンプ製作に取り組んでいて、学園祭などがひとつの発表の場になっています。そのような状況の中スタートしたこの企画は、彼らの活動を捉える格好の場となっています。

音楽之友社に行ってきた

今回はマスターブックから賞品協賛という関係があり、僕も会場に足を運ぶことができました。実のことを言うと、第1回、第2回も見ています。

例年は「夏の工作増大特集」が組まれる8月号の掲載に向けて各校の製作が6月頃にかけて行われるところ、今回はコロナ禍の影響があり、実際の製作は8月頃まで、試聴・評論会は9月末、雑誌掲載は11月号(10月19日発売)と遅れましたが、無事開催となりました。また、以前は音楽之友社・試聴室が舞台でしたが、今回ソーシャル・ディスタンスを確保するため、音楽之友社・音楽ホールに会場を移して、オーディオ評論家、協賛社、『stereo』編集部と、学生たちが集まり開かれました。

学生の発表とオーディオ評論家の感想

まず毎回驚かされるのが、各校の発表の内容。大勢の人の前に立って自分たちで作ったスピーカーについてコンセプトや設計、製作などについて話さないといけませんが、これがなかなか堂々と発表できている点。学業でも発表の場を経験しているせいか、場慣れしていると感じます。普通のオーディオオフ会やイベントなら、緊張して言葉に詰まることもありそうなのに、自分たちのやっていることをしっかり発表できるのはとても大事なことです。しかも目の前にはオーディオ評論家たちが質問をしようとメモを取りつつ、厳しい目を向けているにもかかわらず!

対するオーディオ評論家、僕たちは普段雑誌やウェブメディアなどで評論記事を目にしているわけですが、限られた時間内における試聴、それに発表者の言葉からそれらを評論しないといけません。雑誌を読者として読んでいる時には感じませんが、実はその評論作業というのはかなり大変であることに気付きます。評論家によってはかなりシビアな指摘をその場で行っていることを見ました。そこはさすがにプロの世界。文章だけでなく、耳も凄いわけです。短い時間で得た音質の感想を文章にする難しさは、『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』の音質レビューで僕たちも経験しましたが、評論というのは、個人の感想を述べるようなレベルとは全く異なる難しさがあるということなのだと思います。

今回の評論家は、林正儀さん、岩井喬さん、生方三郎さんに加えて、声優・小岩井ことりさんがゲスト審査員として参加しているところも注目。各校の感想が書かれています。また、全体のリポートは第1回から継続して、小説家の榎本憲男さんが担当。これらの方々とはすでに顔見知りになっている学生もいて、結果的に距離感を縮めて盛り上がりに貢献したこの場は、大変有意義であったと思います。

技術的な側面はどうか

参加者の中には理工系の分野を学ぶ人たちがいます。基礎理論を学び、論文を読んだり最新の設計ソフトウェアや数値制御の加工機械を操りながら、学術的な側面を積極的に取り込んでいます。僕たちマスターブックチームも「データに基づいたエンジニアリングとしてのスピーカー作り」を標榜していますから、こうした理論派が増えていくことを将来像として描いています。学生の間でも、得た知識や技術をしっかりと継承していき、後輩を育てていくことも大事です。

各校の激突はすでに始まっています。来年はもっと凄い技術バトルが繰り広げられることを願っています。

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